Interview

髙坂 和幸

クレイ&デジタル両方の経験を強みに、カーモデラーとしてさらなる成長を目指す

髙坂 和幸(マツダ株式会社)

今、カーモデラーとして活躍している人は、どのような道をたどり、どんなキャリアを積んできたのでしょうか? 実際に自動車メーカーで働くカーモデラーに話を聞きました。

今回、お声がけした髙坂和幸さん(マツダ株式会社)は、高校卒業後にモデラーになる道を選び、現在はデジタルモデラーとしてのキャリアを歩んでいます。カーモデラーとして歩んできた11年を振り返っていただき、これまでとこれからについてお話いただきました。

Profileプロフィール

髙坂 和幸(こうさか・かずゆき)

マツダ株式会社 デザイン本部
デザインイノベーションスタジオ デザインモデリンググループ

岡山県立岡山工業高校 デザイン科を卒業後、2015年にマツダ株式会社へ入社。6年半ほど、クレイモデラーとして量産開発に携わった。2022年以降はデジタルモデラーとして、量産開発やアドバンス領域、動画作成をはじめとする業務を担当している。これまで携わったプロジェクトは「CX-60」「新型CX-5」など。

サッカーを4歳から続けており、現在もマツダの実業団チームで活躍中。

髙坂 和幸

「車はプロダクトの王様」担任の言葉に背中を押された

高校を卒業してすぐに、カーモデラーの仕事に就いたきっかけを教えてください。

髙坂

幼少期の頃から、絵を描いたり、工作をしたりするのが好きだったんです。ものをつくることが楽しくて、高校ではデザイン科に進みました。高校ではビジュアルデザイン、プロダクトデザイン、環境構成デザインの3つの領域を学び、特にプロダクトデザインに興味を惹かれるようになりました。

はじめは、大学に進んでプロダクトデザインを学ぼうかと考えていました。でもあるとき担任の先生から、マツダでカーモデラーの求人があると教えてもらったことがあって。そのときはじめて、「カーモデラー」という職種があることを知りました。自分でもいろいろと調べていくうちに、楽しそうな仕事だと思うようになったんです。

はじめから、自動車業界を目指していたわけではなかったのですね。

髙坂

プロダクトデザイン全般に興味があったので、正直なところ、車そのものが好きだったわけではありません。でも担任の先生が、「車はプロダクトの王様なんだよ」と教えてくれました。

自動車をつくるにはエクステリアもインテリアも必要ですし、小さなネジ1本から全体のスタイリングに至るまで、非常に幅広い領域のプロダクトデザインができる、と。その言葉が、進路を決めるうえで強い後押しになりました。

ちなみに私の父親がすごく車好きだったので、進路のことを相談したときは「すごいじゃん!」と自分以上に興奮していましたね(笑)

髙坂 和幸

一人のクリエイターとして、デザイナーやチームリーダーと緻密に連携し、美しい面と線を生み出します。(画像提供:マツダ)

大学進学をせず、社会人になることに迷いや不安はありませんでしたか?

髙坂

迷いましたし、不安もありました。でもまずは挑戦してみよう、と思ったんです。もしうまくいかなかったら、改めて大学に行くこともできますから。

対話を重ねながら、チームで1台の車をつくり上げていく

クレイモデラーとして、まずはどんな仕事からスタートしましたか?

髙坂

入社後1年ほどは基礎トレーニングを中心に研修を受け、その後OJT(オンジョブトレーニング)に移ってクレイモデラーの基礎作業を学んでいきました。先輩のサポートや指導を受けながら、2年目以降は実際の製品になるデザイン開発に携わるようになりました。

具体的には、どのようなプロセスで経験を積んでいくのですか?

髙坂

あくまで一例ですが、例えば弊社では正面から見て右側のサイドがメインサイドと呼ばれています。そのメインサイドを先輩がつくり、それを測定し、左側を私が再現する作業を日々重ねていきます。先輩がつくる造形を見て理解を深め、自分の形にできるスキルを身につけれるようになっていきました。

社内ではどのような体制で仕事を進めているのでしょうか。

髙坂

マツダでは1台の車をつくるために、デザインに関わる人だけでも数十人、その他の領域も含めると、数百、数千の人が関わっており、チームで協力しながら仕事に取り組んでいます。
私たちカーモデラーは、デザイナーがデザインに込めた意図を汲みとったうえで、お互いに意見を出し合い対話を重ねながら、イメージを実際の形に落とし込んでいきます。

⼊社7年⽬、クレイモデラーからデジタルモデラーに転向

クレイモデラーとして技術を身につけた後、デジタルモデラーに転向した経緯を教えてください。

髙坂

数年前と比較するとデジタル技術が飛躍的に進化していることから、社内で若手・中堅社員を中心にデジタルモデラーを育成する流れが生まれました。私も声をかけてもらい、最初は迷いましたが、クレイとデジタル、両方のスキルと実務経験があれば自身の強みになると考えました。先輩方からも「造形の考え方は変わらない。変わるのはツールだけ」と言われました。

髙坂 和幸

クレイモデラーとして培った技術と感性、そして造形表現の経験が、いまデジタルモデラーとしての創造力へと受け継がれています。(画像提供:マツダ)

髙坂 和幸

趣味はサッカー。サンフレッチェ広島の前身チームである「マツダサッカークラブ」に所属。(画像提供:本人)

実際に転向してみてどうでしたか?

髙坂

戸惑うことも多々ありましたが、今はあのとき先輩に言われた「造形の考え方は変わらない」という言葉の意味を実感する日々です。実際に自分の手で造形を行っていたので、データでつくったものが実物になったときのイメージが、感覚的にわかるんですよね。これはクレイモデラーを経験していなかったら身についていなかったと思います。

デジタルモデラーとクレイモデラー、それぞれの仕事の大変さを教えてください。

髙坂

デジタルモデリングの場合、データを調整するためにひとつひとつのアクションにコマンドを入力する必要があり、感覚的な調整が難しい点でしょうか。私がもともとクレイモデラーだからかもしれませんが…、未だにときどき、画面に手を突っ込んで直にモデルに触れ、自分の手で造形したくなることがあります。(笑)

クレイモデリングの大変さは、身体全体を使って等身大モデルを造形すること。体力勝負な仕事ではあると思います。特に夏の作業は室温が25,26度にも関わらず、汗をかきながら作業することも多々ありました。

いつしか後輩を指導する立場に。自身の技術もさらに磨いていく

2025年現在、どのような仕事に取り組んでいますか?

髙坂

これまでずっとエクステリアを担当してきましたが、今年からインテリアの仕事にも携わるようになりました。細かいパーツや自分のみで完結できるパーツもあり、エクステリアとはまた違う楽しさがあります。
また現在では、自分が学んできたことを後輩に教える立場になりつつあります。新入社員をはじめ、後輩を指導しながらプロジェクトを共にする機会が増えてきました。

改めて、10年以上キャリアを積んできた髙坂さんが考える、カーモデラーの仕事のやりがいを教えてください。

髙坂

やはり、自分が製作過程に携わった製品が世の中に出ていくことに喜びを感じます。特に車は、街中で実際に走っているところを自分の目で確認できるのが大きいですね。

髙坂 和幸

インタビューは、マツダ本社ショーショールーム(広島県・府中町)で、和やかに行われました。(撮影:JCMA編集部)

今後の目標はありますか?

髙坂

デジタルモデラーとしてはまだまだキャリアが浅いので、これからも技術を磨いて、製品のより重要な部分を担当できるようになりたいです。
個人的には、いつかスポーツカーに携わってみたいなと思っています。カーモデラーとして、自分が好きな車種に関わっていけたらいいな、と。

最後に、これからカーモデラーを目指す学生さんにアドバイスをお願いします。

髙坂

車だけではなく、さまざまなプロダクトに興味を持つことをおすすめしたいです。いろいろな造形を観察して、「この形は好き」「これは好きじゃない」という自分の視点を養っておくことが大切です。

カーモデラーは自分の好みを全面に出す仕事ではありませんが、まずは自分の中に引き出しをたくさん持っておく。そのうえで「こういうデザインもありえるかも」と、柔軟な捉え方ができるようになることが重要だと思います。

髙坂 和幸